ブログ

オペアンプ回路の設計サンプル(1)

ここでは、電池動作(約3Vの単電源)を想定します。その他のスペックとしては、ゲイン10倍、信号は音声(20Hz~20kHz)を想定し、消費電流も低い条件で、比較的簡易な設計をします。

いくつかの回路が考えられますが、下図に示すように比較的シンプルな回路を使用し、各抵抗やコンデンサの定数を決定します。

opamp

まず、ゲイン= R2/R1 = 10 より、R1またはR2を決定することにより、他方が決まります。ここでは低消費電力を重視し、R2=1MΩとすると、R1=100kΩとなります。

次に、Voの範囲は0~3Vなので、信号の無い時は3Vの半分の1.5Vが望ましい。上記の回路では、非反転入力の電圧が3Vの半分にすれば良いので、R3=R4となる。低消費電力を重視して、R3=R4=1MΩとします。

抵抗は雑音源でもあり、抵抗値が大きくなるほど雑音が増加するので、上記で問題ないかを後で確認します。

次にC1ですが、扱う信号の下限(=20Hz)にて、R1より十分に小さいインピーダンスである必要があります。すなわち、

1/(ωC1) ≪ R1

通常コンデンサは容量が大きくなれば価格が高くなり、また20Hzをしっかりと再生できるスピーカーが無い、聴感上20Hzの減衰はあまり気にならない等の状況を考慮し、以下のような条件とします。

1/(ωC1) ≒ R1

よって、

C1 ≒ 1/(ωR1) = 1/(2πf*R1) = 1/(2*3.14*20*100000) = 0.0796uF

実際に入手できるものから、C1 = 0.082uF か C1 = 0.1uF を選択します。どの種類のコンデンサを使うかも状況によっては重要ですがが、ここでは割愛します。

C2, C3は、いわゆるパスコンと呼ばれているもので、一般的には0.01uF~0.1uF が使われます。

部品の種類は少ないほうが通常望ましいので、ここでは

C1 = 0.1uF

C2 = C3 = 0.1uF

とします。

次に抵抗による熱雑音の確認をします。抵抗による熱雑音は下記の式で与えられます。

熱雑音

まずR1から発生する熱雑音は、kB = 1.38^-23(J/K)、T=300K、R=100kΩ、Δf=20000 を代入すると、Vn1=5.76uVrms となり、これが10倍されて出力されますので、R1によって出力に生じる雑音は約58uVrms となります。

また、R2から発生する熱雑音は、kB = 1.38^-23(J/K)、T=300K、R=1MΩ、Δf=20000 を代入すると、Vn2 = 18uVrms となります。

この2つの雑音を合成すると、Von=(58^2+18^2)^0.5=60uVrms

またR1からこれは、入力信号に雑音が無くても上記の回路から出力される雑音です。

さて、最大出力レベルVo,maxは Vo,max = 3/2.828 = 1.06Vrmsなので、このときのSN比は、20log(1.06Vrms/18uVrms)≒85dB となり、増幅器としてはあまり良くはありませんが、今回は低電圧動作かつ低消費電力に重点を置いているので実使用上問題なければこれで良しとします。(注:rmsは実効値の意味。)

もし、雑音を小さくしたい場合は、消費電流は増えますが、抵抗値を小さくすることで対応できます。

なお、他の抵抗(R3, R4)から生じる熱雑音はC4で十分に小さくできますし、オペアンプICに関しては雑音の十分に小さいものを選択すればよいということで、上の計算では省略しています。

最後にオペアンプICを決める必要があります。電源電圧が小さいのでレール・ツー・レールの入出力特性を有し、かつ1MΩの抵抗を使用していますので、CMOSタイプのものがお薦めです。私は価格の安いMCP6002T(Microchip)をよく使用しています。

20kHzをきれいに増幅できるかをスルー・レート特性が規定しますが、必要なスルー・レートは(3V/2)*(2*π*20kHz)=0.188(V/us)であり、またMCP6002Tの仕様は0.6(V/us)なので、まあ大丈夫かなと判断できます。(ここでは割愛しますが、MCP6002Tの雑音も上記の18uVrmsよりも小さいので大丈夫と判断しました)

また、MCP6002Tは1.8Vまで動作可能なので、電池が少々消耗して電圧が低下してもしばらくは大丈夫です。

試作レベルではこのくらいでもいいのかなと思います。

実際の製品設計では、回路規模も大きく、温度や電源電圧等の各種変動に対しても仕様を満足させるためにシミュレーションを繰り返す必要があります。また部品の選択も大変で、たとえば抵抗を考えても抵抗値以外にばらつき、温度特性、耐圧、価格、入手性等多くのパラメータに対してバランスを考慮して選択する必要があります。また、コンデンサの選択は抵抗よりも難しく、オペアンプICでは、10項目以上のパラメータを検討する必要がありますので、かなり大がかりな作業になります。世の中に出ているハードウエア製品は、このような努力の結晶と言えます。

なお、上の検討に間違いや不十分な点などがあるかもしれません。それはまだ私が未熟なためですので、ご容赦ください。間違いのご指摘等ご意見がありましたら、遠慮なくご連絡ください。