電圧レファレンス(基準電圧源とも呼ばれています)として、ここでは非常にポピュラーで、類似品の豊富なテキサス・インスツルメンツのTL431で考えます。データシートを見ますと、下図のようなツェナーダイオードのような回路記号に横からREF端子が出ています。
簡易には、REFピンとCATHODEピンを接続した状態で、ツェナーダイオードと同じような使い方ができます。(下図参照)
ツェナーダイオードは電圧が固定ですが、このTL431は抵抗を使って任意の電圧に設定できます。
経験者は、下の機能ブロック図を見れば、おおよその動作は分かります。
下の推奨動作条件範囲の1mA~100mAの間で消費電流や雑音等の特性を考慮して決めると、上のINPUTとVKAの間の抵抗値は決まります。
また、R1, R2に流れる電流は下図のIref(=2uA typ)より、十分に大きくする必要があります。たとえば、R1, R2に流す電流を20uAとすれば、
20uA * R2 = Vref
20uA * ( R1 + R2 ) = VKA
より、VrefとVKAが決まれば、R1, R2は決まります。VKAは設計仕様なので、あらかじめ決まっていることが多く、Vrefは部品選定時に決まります。(なお、ここではIrefは十分に小さいとして無視しています)
これで終わりと言いたいところですが、この手の電圧レファレンスはノイズが大きいと言われていますので、ローノイズの製品では注意が必要です。(ツェナーダイオードも同様で、ノイズ発生装置のノイズ源として使用されることもあります)
下図が入力換算のノイズ電圧特性です。VKA=Vrefの時のVKAのノイズに相当しますので、VKAが大きくなると、その分ノイズも大きくなります。ローノイズのオペアンプに比べて10倍以上になるので、ローノイズ製品の設計時には注意が必要です。
ノイズを小さくするためには、コンデンサをVKAとGND間に挿入することが考えられますが、この電圧レファレンスの出力インピーダンスが小さいので、十分な効果を得るためには大きな容量が必要になったり、また下図のようにコンデンサの容量によっては不安定になることがあるので注意してください。電圧レファレンスの出力インピーダンスを大きくしても問題無い場合は、VKAの先に抵抗を挿入して、その抵抗のもう一方のピンとGND間にコンデンサを挿入すれば(いわゆるRCのローパスフィルタを構成すると)、ノイズ特性を改善することができます。
まだまだ、温度変動やたくさんあるTL431の類似製品からどれを選択するか等記述すべきことがありますが、長くなりますのでこれで終わります。
基準電圧を生成するという非常に単純な回路ですが、きちんとした設計をする場合は検討や確認をすべき項目が上のようにたくさんあることがご理解いただけたでしょうか? 大変だとお思いかもしれませんが、設計目標の難易度に応じて、検討項目を適宜取捨選択して対応することになるかと思います。